安倍文殊院(あべもんじゅいん)は奈良県桜井市にある華厳宗の寺院である。山号は安倍山。本尊は文殊菩薩。開基は大化の改新の時に左大臣として登用された安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)である。
切戸文殊(京都府宮津市)・亀岡文殊(山形県高畠町)とともに日本三文殊に数えられる。また、大和七福八宝めぐり(三輪明神、長谷寺、信貴山朝護孫子寺、當麻寺中之坊、安倍文殊院、おふさ観音、談山神社、久米寺)の一つに数えられる。
創建当時の寺地は現在の文殊院の西南300メートルほどのところであり、鎌倉時代に現在地に移された。旧寺地は「安倍寺跡」として国の史跡に指定され、史跡公園として整備されている。
安倍文殊院では陰陽師・安倍晴明が陰陽道の修行をしたともいわれ、平成16年(2004年)には安倍晴明堂が建立されている。晴明堂には「如意宝珠の玉石」と呼ばれる石があり、願いごとをしてこの玉に触れると叶えられるという。
重要文化財に指定されている白山神社本殿は、室町時代後期の建立された流造柿葺の建物で、縁結びの神として知られる。
境内には文殊院西古墳、文殊院東古墳がある。文殊院西古墳は本堂近くにある7世紀中頃の古墳で、豪族安倍(阿倍)氏一族の墓であることはほぼ確実視され、安倍倉梯麻呂の墓であるともいわれる。
文殊院東古墳は7世紀前半に築造されたといわれる古墳で、古来から閼伽井窟(あかいくつ)と呼ばれ、信仰の対象とされてきた。
この東古墳の羨道中程に、昔から枯れることなく湧き出ている泉があり、「知恵の水」と呼ばれている。この水で習字をすると上達し、知恵が授かるという。
奈良県桜井市阿部645